Aさんの無念を闇にほうむらせてはならない
「公益通報」と「同和利権」
Aさんの公務災害認定を支援する会事務局長
雑賀 光夫
1 ゆがんだ同和行政が温存されてきた和歌山市
2020(令和2)年6月25日早朝、和歌山市職員であったAさん(28歳)が自宅納屋で自死しました。お母さんが「公務災害認定」を請求しましたが、棄却され、「不服申請」の申し立てをおこなっています。
私たちがお母さんにお会いしたのはAさんが自死してから3年半たった2024年の1月でした。ことを解き明かすにはさらに前から話を進めなくてはなりません。
部落差別をなくそうと1969年に「同和対策事業特別措置法」が制定されました。長年の努力の結果、同和地区内外の格差は基本的に解消し、「特別行政」を行うことはかえって弊害を生む段階に来ました。そこで、「特別措置法」は廃止されることになりました。
しかし、長く続いた同和対策事業を「利権」とするし食い物にする状況が一部地域に生まれました。それが改めて問題になったのが、5年前の2019年10月、当時、和歌山市の芦原連合自治会長であった金井という人物が詐欺容疑で逮捕された事件でした。県や市の公共事業を受けた業者に和歌山市の職員が「(芦原)自治会長にあいさつに行ってほしい」といい、金井は工事費用の上前をピンハネしていたのです。
和歌山市の同和行政のゆがみはそれにとどまりません。
・旧同和子ども会への法外な補助金は、いまも続いています。
・同和行政で建設した「改良住宅」は、空き室がたくさんあるのに公募されていません。
金井逮捕事件がおこったとき、尾花和歌山市長は、「長年のウミを出し切る」と言明しました。しかし、実行されませんでした。
私は県議会議員をしていましたが、引退することを決めていた2019年の3月、私の事務所に和歌山市の職員が訪ねてきてくれました。西泰伸さん、市内のある児童館の館長さんでした。
西さんが言います。「和歌山市の同和行政はおかしいと思っていたのです。こんど別の児童館の若い職員が公益通報したらしい。若い子を孤立させてはいけないと、僕も自分が気になっている問題を通報しました。ネットでみると県議会で雑賀さんがこの問題を取り上げているので、相談に来たのです。
この出会いから半年後に「金井逮捕」のニュースが流れ、西さんと私は今度こそ和歌山市を同和利権のない明るいまちにと仲間とともに取り組みはじめていました。
2 公益通報した職員の自殺、自宅を探して
年が明けて2020年2月に和歌山市は、講師料不正支出など平井児童館の問題の公益通報を調査した結果をふまえて関係職員を処分したことを公表しました。和歌山市の「同和行政」のウミを出し切るチャンスでした。
ところが、その後、「平井で公益通報した職員が自殺した」といううわさが市役所内に流れたのです。西さんは市役所の職員でしたから職員の名前をつかんでくれました。(私たちは「Aさん」としています)
職員録にはAさんの名前がありますが、個人の住所がはいっていません。苦労してその職員の自宅を探し当てお母さんにお会いする
ことができました。
お母さんは、息子が自殺した真相解明を和歌山市にも県にも求めたが相手にされなかった無念さを語られました。公務災害申請を出しておられることを知り、支援の取り組みをはじめました。
和歌山の弁護士さんにも相談しながら、こうした問題を扱う経験のある弁護をさがし、「いわき総合法律事務所」にたどり着いたのです。
次第に真相が明らかになってきました。何よりも驚いたのはAさんが平井児童館で不正な申請書類作成に加担をせまられた経過が生々しくかかれた書類(病気休職願)【資料1】、休職明けの職場復帰後、平井子ども会の関係で処分を受けた職員がお母さんがAさんと目と鼻の先の席に異動してきたフロアー配置図などでてきたことです。お母さんがAさんの遺品から見つけ出したものでした。
3 「支援する会」結成へ
黒い闇を解明できるかがカギ
弁護団、お母さんと相談しながら「Aさんの公務災害実現を支援する会」を立ち上げました。私たちの要求は二つです。
第一は、「Aさんの公務災害を認定すること」。県庁内にある「公務災害基金審査会県支部」への要求です。第二は「Aさんが自死に至った真相解明のための第三者委員会を設置すること」これは和歌山市長に対する要求です。
和歌山市もだんまりを決め込むことはできなくなり、「公正職務審査会」を開いて第三者に判断してもらうと言い始めました。公正職務委員会というのは平井での問題で職員処分をしたとき、設置条例を作っていたのですが、一度も開いたことのないものでした。
6月のある朝、私たちは市役所前で宣伝していました。一人の職員がメモを手渡してくれました。「走り書き」を解読してみると「Aさんは、滞納差し押さえする方針であったが、上司がその方針を嫌っていた。方針の違いでAさんは異動となった(報復人事)と聞いたことがある。」という意味のことが書かれていました。
平井地域での滞納差し押さえにAさんが動いたために平井児童館に異動させられ、平井こども会会長(講師謝礼を不正にうけとりのちに返還した人物)から、「面接」をうけ、その後上司から不正に手を染めるように強要されたという私たちに前から入っていた「情報」と完全に一致するものでした。
公益通報者が守られているかという問題、違法な公文書作成強要、ゆがんだ同和行政の三つが重なった問題です。
真相解明はこれからです。
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